生理痛がひどく、毎月のように悩む方は少なくありません。ベッドから起き上がれない、学校や会社にいけない、カイロで温めたり痛み止めを飲んだりしても効果がない……この記事はそんな方に向けて、生理痛がひどいときに考えられる原因や病院に行く目安、また、病院での診察内容などを詳しく解説します。
この記事の監修医師
産婦人科クリニック 広尾レディース院長
宗田 聡
生理痛がひどい場合は要注意
生理痛は我慢してはいけない
生理がはじまってから下腹部に多少の違和感や軽い痛みを感じる程度であれば大きな心配はありませんが、強い痛みを感じるときは注意が必要です。
「生理痛は我慢しないといけない」と思っている人もいますが、ひどい生理痛は我慢し続けてはいけません。ときには子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が隠れていることがあり、年々症状が悪化していくこともあります。また、将来的に妊娠しづらい「不妊症」に繋がるリスクもあります。
生理痛がひどいときに考えられる原因
日常生活に支障がでるほど生理痛がひどい場合は「月経困難症」と呼びます。「ベッドから起き上がれない日がある」、「毎回のように痛み止めの薬を飲んでいる」という人は、月経困難症と考えられます。
月経困難症は大きく二つに分けられます。
(1)器質性月経困難症(きしつせいげっけいこんなんしょう)
(2)機能性月経困難症(きのうせいげっけいこんなんしょう)
「器質性月経困難症」は、子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)や子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)などの疾患が原因となっているケースです。
子宮内膜症は生理(月経)のある女性の10人に1人がかかると言われているほど身近な病気です。特に20代から30代の女性に多く見られます。
子宮筋腫とは、子宮の筋肉からできる良性の腫瘍で、成人女性の4人に1人は子宮筋腫があると言われています。特に30代から40代の女性に多く見られます。
一方で、子宮内膜症や子宮筋腫のような疾患がない場合は「機能性月経困難症」と考えます。これは、経血を排泄するために子宮の収縮を促す「プロスタグランジン」という物質が過剰に分泌されてしまっていたり、経血が通る子宮の出口(子宮頸管)が狭いことなどが原因で強い生理痛があるケースです。このような生理痛は、特に10〜20代の女性に多いです。ちなみに、生理痛とあわせて腰痛や吐き気、下痢、頭痛などの症状がある人もいます。
生理痛がひどいときの対処法
もし毎回のように痛み止めを服用していたり、服用しても効かないぐらい生理痛がひどいときは、我慢せずに早めに婦人科を受診してください。
子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患が原因となっている場合は放置しておくと痛みが年々悪化してしまったり、将来的に妊娠しづらい状態になってしまったりするため、放っておかずに、早めに婦人科を受診することが大切です。
また、そのような疾患が原因ではなくても、ひどい生理痛が毎月のようにやってくるのはとても辛いと思います。婦人科にいけば、少しでも痛みが和らぐようにお薬を処方してもらえます。
病院に行く目安と診察内容
病院に行くべき目安のチェックリスト
以下に心当たりがあれば、婦人科を受診するようにしてください。
- 生理痛がひどくてベッドから起き上がれない
- 1日に何度も鎮痛剤を飲まないと耐えられない
- ひどい生理痛以外に吐き気や腰痛、頭痛などの体調不良がある
- 生理痛が年々にひどくなっている
- 経血量が多い
- セックスのときに痛みを感じる
- 排便、排尿のときに痛みを感じる
- 生理期間中以外の時も下腹部に痛みを感じる
もし婦人科に行くべきか迷ったら、産婦人科医監修の生理管理アプリ「ケアミー」の「相談チャット」を使ってみてください。匿名かつ無料で相談でき、医学的に正しい情報や病院に行く目安などを教えてもらえます。
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問診について
診察は問診から始まり、痛みの程度や症状を確認します。
<問診で確認される内容(一例)>
- 初経年齢
- 月経周期(生理が始まってから、次の生理が来るまでの日数)
- 月経日数(生理が続く日数)
- 最終月経日(前回の生理が始まった日)
- 経血量
- 生理痛の程度
- 生理痛以外に起こる症状
- 性交渉経験の有無
- 妊娠経験の有無
- 過去の病歴・手術歴など
内診や超音波検査について
問診の後、内診や超音波検査(エコー)を行い、子宮や卵巣に疾患がないかどうかを調べます。
性交渉(セックス)の経験がない方や、内診が苦手な場合は検査内容を変更するなどして、可能な範囲で診てもらうことも可能です。
もし内診に対して大きな不安があったり苦手意識がある方は、病院を予約するときや、病院で診察前の問診時(紙に書かれた質問に答えるとき)に、「内診は苦手なので、検査内容は相談したい」と伝えるようにしてください。
診察後の診断について
問診と内診・超音波検査をしたのち、必要に応じて採血などをすることもあります。
それらの検査によって何か疾患が見つかれば「器質性月経困難症」と診断され、疾患がないと考えられれば「機能性月経困難症」と診断されます。
生理痛の治療について
原因によって治療法は違う
「器質性月経困難症」と診断された場合は、その病気に対する治療を行います。器質性月経困難症の原因として挙げられるのは、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などです。
具体的な治療内容は症状によって異なりますが、例えば子宮内膜症であれば、痛みに対する処置として鎮痛剤が処方されたり、症状の進行を抑えるために低用量ピルが処方されたりします。
「機能性月経困難症」と診断された場合は、痛みが緩和するように鎮痛剤や漢方薬、低用量ピルなどが処方されます。
鎮痛剤について
鎮痛剤は、痛みの原因になる「プロスタグランジンが増えるのを抑える」という働きがあります。ですから「生理痛がきそうだな…」と下腹部に違和感を覚えたら早めに服用することが大切です。
「我慢できなくなったら飲む」という方がたまにいますが、それは効果的な服用方法ではありません。
プロスタグランジンが増えて生理痛がひどくなってからでは効き目は薄く、プロスタグランジンが増える前に飲むことがポイントです。「痛くなりそうな直前に飲む」または「痛くなったらすぐに飲む」と覚えておきましょう。
漢方薬について
漢方薬は、服用することで東洋医学的に血の巡りをよくするなど体質改善を目指すものです。
個人の体質などによって合う漢方薬は異なりますが、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や桃核蒸気湯(トウカクジョウキトウ)などは生理痛の改善に繋がると考えられてます。
低用量ピルについて
ピルと聞くと「避妊薬」のイメージが強い方もいるかもしれませんが、低用量ピルは月経困難症や子宮内膜症、また生理前の不調(PMS)に対する薬としても処方されています。
低用量ピルを服用していると、その期間は排卵そのものが止まるので、通常のホルモンバランスの変化による生理が起こらなくなります。それにより、生理痛の原因である「プロスタグランジン」による子宮の収縮が緩和され、生理痛も緩和されるという仕組みです。
このように鎮痛剤や漢方薬、低用量ピルなど、生理痛の緩和に繋がる治療法があります。生理痛がひどくて困っている方は、ぜひ一度婦人科にご相談くださいね。
以上、この記事では生理痛がひどいときに考えられる原因や病院に行く目安、そして治療方法などを解説しました。「生理痛は我慢しないといけない」と考えてしまう人は多いのですが、我慢してはいけません。婦人科に行くことで、つらい生理痛の悩みが解決できることは多いので、生理痛がひどくて悩んでいるのであれば婦人科を受診するようにしましょう。
参考文献
月経困難症,公益社団法人 日本産婦人科医会,,https://www.jaog.or.jp/lecture/%E6%9C%88%E7%B5%8C%E5%9B%B0%E9%9B%A3%E7%97%87/
子宮内膜症,公益社団法人 日本産科婦人科学会,,http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=9
子宮筋腫,公益社団法人 日本産科婦人科学会,,http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=8